2025年11月22日土曜日

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徳尾俊彦先生『仏文解釈法 類語編』を読む

解釈の精透と表現の緻密

 

20243月から202511月まで、翻訳の前提条件である仏文解釈の実力を高めるために、山田原実先生 著『仏文和訳法』(大学書林,1949)を読んできました。この12月からは「解釈の精透と表現の緻密」を目指して徳尾俊彦先生(18871942)のご著書のひとつ『仏文解釈法 類語編』(1929年、白水社刊)を読んでいきます。

読んでいくといっても、表記を新字・新かなに換え、主にネット上で無料公開されている辞書から説明を引用してお届けする程度です。他の参考書を調べて若干の補足を加えることもあります。間を空けず、同じようなペースで発行したいと思います。皆さまどうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回は0号として、「はしがき」「注意」「目次」、そして「Synonymesについて」までをお届けします。

テキストは、

徳尾俊彦『仏文解釈法 類語編』、白水社、1929、国立国会図書館デジタルコレクション

https://dl.ndl.go.jp/pid/1146345

を用います。デジタルコレクションは、個人送信サービスの利用者登録をすれば誰でも読むことが可能です。この機会に登録されることをお奨めします。

※以下、四角の枠で囲まれた文章が『仏文解釈法 類語編』の本文です。あるいは辞書からの引用を示している場合もあります。

 

さあ、始めます。

はしがき

 

 Synonymesの研究の必要なことは、今更、ここに述べるまでのこともない。しかし、従来、これを研究するには、LarousseLittréの大辞典か、もしくは、Lafayeなどの「シノニーム」大辞典に依るよりほかに方法がなく、ちょうど、手ごろの書物がなかったために、自然、この研究は等閑に附せられていたのである。

 これ、著者が、菲才を顧みず、本書を公にした所以で、聊かなりとも、読者に資するところあれば、本懐の至りである。

 なお、本書の編集に際し、多大の援助を与えられたる、目黒三郎、和田誠三郎両氏に深厚なる感謝の意を表する。

 

昭和四年十一月

                         著者識す

 

            注意

1)本書を辞書的に使用するときには、索引に依って、語の位置を見出すようになっている。

2Synonymesの訳語は、次のように添加してある。

——例

 訳語を同じくするもの

 lever, élever 上げる

 finir, cesser やめる、やむ

 訳語を異にするもの

 changer変える ; échanger交換する

3Synonymesの下の括弧内には、そのSynonymesと語根を同じくする語を揚げて、参考に供してある。

4Synonymesの註解の所の名詞の後に、f.とあるは、その名詞が女性であることを示し、なんらの註記がないものは男性である。

 

              目次

                                頁

Synonymesについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

 Synonymesの定義と形・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

 Synonymesの研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅱ同じ語根をもつSynonymes・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

 (1)名詞の単数-複数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

 (2)集合名詞-普通の名詞の複数・・・・・・・・・・・・・・ 4

 (3)名詞の女性-男性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

 (4)冠詞の有無、形状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

 (5)普通の名詞-動詞の不定法より転化した名詞・・・・・・・ 8

 (6)普通の抽象名詞-形容詞より転化した名詞・・・・・・・・ 9

 (7)形容詞-de+冠詞+名詞・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

 (8)自動詞-代名動詞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

 (9)自動詞=être+分詞(もしくは形容詞)・・・・・・・・・・12

 (10)他動詞-代名動詞・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

 (11)動詞+名詞-動詞+前置詞+名詞・・・・・・・・・・・ 13

 (12)他動詞+à-他動詞+de・・・・・・・・・・・・・・・・14

 (13)普通の動詞-動詞+名詞・・・・・・・・・・・・・・・ 17

 (14)普通の動詞-動詞+形容詞・・・・・・・・・・・・・・ 17

 (15)代名動詞-Se mettre à+名詞・・・・・・・・・・・・・ 18

 (16)単一形副詞-組成形副詞・・・・・・・・・・・・・・・ 19

 (17)形容詞より転化した副詞-普通の副詞・・・・・・・・・ 21

 (18)接頭語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24

    a・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

    dé,de・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

    é・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

    en・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28

    par・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

    re,r・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

 (19)接尾語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

    age・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

    ée・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33

    ment・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34

    queal・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35

    tionment・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

    雑・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39

Ⅲ異なる語源をもるSynonymes・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

   (A,B,C順)

 

Synonymesについて

 Synonymesの定義と形

辞書Larousseに依れば、synonymesは、des mots qui ont à peu près la même significationであると説明している。さて、これを形の上から見れば、次のごとくに分類することができる。

1)同じ語根をもつもの 

    文法的性質、構成を異にす      単数と複数

                          女性と男性

                          完全形と省略形

          単一形と組成形

                           位置、など

    

    語の構成を異にす       接頭語

                       接尾語

 

2)異なる語根をもつもの

 

 Synonymesの研究

解釈の精透表現の緻密を期するためには、是非とも、synonymesの研究に歩を進めなければならない。さもなければ、ある外人が、日本語で「あなたの坊ちゃんは別嬪ですね」、「私は、今日、身体の具合が悪いから出家しません」などと言ったような間違いを犯すことになる。

 

 本書は、この研究のために、主に次の書籍を参酌して編纂したのである。

Grand dictionnaire Larousse.

  Nouveau Larousse illustré.

  Larousse universel.

  E. Littré  Dictionnaire de la langue française.

  B. Lafaye  Dictionnaire des synonymes.

  A.-L.  Nouveau dictionnaire des synonymes français.

 

元来、synonymes nuancesは、語源的研究を緯とし、古今の諸文豪の書いたものの綜合と経として、定められるものである。したがって、それぞれ、論者により説を異にしているものがある。本書では、なるべく、種々の説を取り入れることにした。

 

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