『仏文和訳法』を読む(例文222)
山田原実 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262
を読んでいます。
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第六章 代用語句 (ホ)~, et cela + 状況補語句のcelaは前出の事柄を繰り返す用をなす |
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[例文222] On veut souvent dire que l’œuvre ou la beauté admirée exprime exactement la nature personnelle ou le caractère et les mœurs de l’artiste ou de l’admirateur, et cela d’autant plus qu’elle est plus belle. Beauté c’est personnalité, que d’ailleurs l’on identifie fort arbitrairement ici à sensibilité.
[訳] 往々、人は、作品もしくは鑑賞された美というものはその芸術家または鑑賞者の天性または性質と風習とを正確に表明し、そして、それが美であればあるだけよけいに、そういうものを正確に表明すると言いたがります。美はすなわち人格であるというのです。その上、ここでは非常に専断的にもこの人格というものと感受性というものとを同一視しているのです。
[註] et cela は前出の事柄、すなわちl’œuvre ou la beauté exprime… de l’admirateurを繰り返している。
※「そして、それが美であればあるだけよけいに、」の部分は、『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963)では「そして、それが美しければ美しいほどますます多く、」と訳されています。
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◯語句補足
les mœurs は「風習」というと集団の行いのように感じてしまうので、
「品行」「生活態度」とかがよいのではないかと思います。
◯今日の要点
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(ホ)~, et cela + 状況補語句のcelaは前出の事柄を繰り返す用をなす |
辞書で確認しておきましょう。
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cela /s(ə)la スラ/ [代] ⸨中性指示⸩ ⸨話し言葉では ça となることが多い⸩ 1 ⸨ceci と区別される用法⸩ ➋ ⸨既に述べた事柄を指して⸩ そのこと.注ceci は次に述べる事柄を指す. Il a échoué à l'examen: cela lui a fait perdre la face.|彼は試験に失敗し,それで面目をつぶした. ..., et cela|…しかも. Il m'a empêché de travailler, et cela toute la journée.|彼は私の仕事の邪魔をした,しかも一日中だ. 『プログレッシブ仏和辞典』 |
今日は以上です。