2024年4月30日火曜日

例文27

 

『仏文和訳法』を読む(例文27

 

 

山田原実 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262

を読んでいます。

 


(ハ)主語と動詞が転位する場合

A. 疑問文。 これは説明を要しないことである。

B. 挿入文。 人の言った言葉の中間又は後方に置かれて、「何々と云った」「何々と答える」等の意を表す文である。即ち次の如き動詞が挿入文として用いられる場合は主語と動詞が転位する。

C. 関係代名詞文の主語と動詞が転位することが多い

D. 次の如き副詞が文頭にある時は、一般に、主語と動詞が転位する。

à plus forte raisonましてなおさら aussiそれゆえに

encore(なお) peut-être(おそらく)

E. 属詞が文頭にある時は主語と動詞が転位する

 

前回までで、「(ハ)主語と動詞が転位する場合」の、AEまで見てきました。

今日からFに入ります。

 

F. 間接目的補語、状況補語が強調されて文頭にある時、主語と動詞が転位することがある。

 

例文27

À la France, ou à son influence, sont dues la vraie tragédie et la vraie comédie lyrique.

 

[語句]

être dû à~~の故である、~のお陰である

 la comédie lyrique オペラ喜劇

 

[訳]

まことの悲歌劇や喜歌劇は、フランスまたはその影響のお陰をこうむっているのだ。

 

 

〇今日の要点

例文27は、普通は

La vraie tragédie et la vraie comédie lyrique sont dues à la France, ou à son influence,

 

の順で書かれますが、

 

間接目的語(六鹿豊『これならわかるフランス語文法 入門から上級まで』の文法用語に合わせます) à la France, ou à son influence が文頭に置かれたために、主語 la vraie tragédie et la vraie comédie lyrique と述語 sont dues が倒置されています。

 

例文27

À la France, ou à son influence, sont dues la vraie tragédie et la vraie comédie lyrique.

 

今日は以上です。

2024年4月28日日曜日

例文26

 

『仏文和訳法』を読む(例文26

 

山田原実 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262

を読んでいます。

 

 

E. 属詞が文頭にある時は主語と動詞が転位する

 

 
  Tel est le cas de ~の場合がそうである」

今日も↑の続きです。

 

例文26

Tous les étudiants en droit savent qu’en droit romain le mode essentiel de la propriété s’appelait “mancipation ”qui vient de deux mots latins qui veulent dire : prendre avec la main. Donc, originairement, seuls les objets qu’on pouvait saisir et manier étaient considérés comme les objets appropriables. Et tel est le cas tout naturellement des objets qui sortent des mains de l’homme sous forme produits de son travail.

 

[語句]

la mancipation 所有権の移転 握取行為 appropriable 占有され得る

manier 手で扱う

[訳]

法律学生は皆ローマ法においては所有の最も本質的な形式はmancipation握取行為)と呼ばれていたことを識っている。この語は「手で取る」と意味する二つのラテン語から出ている。ゆえに初めは手に取り、手で扱うことの出来るもののみが占有され得るものと考えられておったのだ。そして人の労働の生産物という形式のもとに人の手から出て来るものは、当然、この場合にあてはまったのである。

※訳は新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963)によりました。

 

 

〇語句補足

mancipation [女性名詞]

-man(i)-, -cip- 【ローマ法】 握取行為銅衡式売買儀式的行為を通じての所有権譲渡.     『ロベール仏和大辞典』

 

↓で見るように、物の所有権移転の際に、持ち主が手に取って自分の所有であることを示すという儀式的行為が問題になっています。

百科事典を見てみましょう。

握取行為
あくしゅこうい
mancipatio

古代ローマにおける手中物 res mancipi──たとえばイタリアの土地,奴隷,軛および鞍で馴育しうべき動物,農業用地の地役権など──の所有権移転の物権的要式行為。所有権を移転しようとする当事者双方が,目的物たる手中物を持ってローマ市民である1人の計量係 libripensと,これと同一の資格を有する5人の証人のもとにおもむき,彼らの面前で目的物を握って,法定の式語を言明し,移転を受けようとする当事者は計量係の持っている秤を銅片でたたき (または押下げ) ,その銅片を代金の代りに相手方に手渡して,握取行為は完了する。これにより手中物の受領者は,市民法上の所有権を取得し,これに付随して供与者の受領者に対する追奪担保および瑕疵担保責任が発生した。前3世紀中頃には握取行為が仮装売買に代えられる現象が顕著になった。ユスチニアヌス帝法にはこの制度は存在しない。

出典 『ブリタニカ国際大百科事典 』

 

〇今日の要点


Tel est le cas de
~の場合がそうである」

 

Et tel est le cas tout naturellement des objets qui sortent des mains de l’homme sous forme produits de son travail.

そして人の労働の生産物という形式のもとに人の手から出て来るものは、当然、この場合にあてはまったのである。

 
短くすると
tel 
est  le cas  des objets 
qui sortent des mains de l’homme

人の手から出て来るもの場合がそうである。

                         になります。

 

今日は以上です。

例文305

  『仏文和訳法』を読む(例文 305 )   山田原実先生 著『仏文和訳法』 , 大学書林 ,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262 を読んでいます。   第八章 ...