『仏文和訳法』を読む(例文26)
山田原実 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262
を読んでいます。
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E. 属詞が文頭にある時は主語と動詞が転位する
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今日も↑の続きです。
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[例文26] Tous les étudiants en droit savent qu’en droit romain le mode essentiel de la propriété s’appelait “mancipation ”qui vient de deux mots latins qui veulent dire : prendre avec la main. Donc, originairement, seuls les objets qu’on pouvait saisir et manier étaient considérés comme les objets appropriables. Et tel est le cas tout naturellement des objets qui sortent des mains de l’homme sous forme produits de son travail.
[語句] la mancipation 所有権の移転 [ 握取行為] appropriable 占有され得る manier 手で扱う [訳] 法律学生は皆ローマ法においては所有の最も本質的な形式はmancipation(握取行為)と呼ばれていたことを識っている。この語は「手で取る」と意味する二つのラテン語から出ている。ゆえに初めは手に取り、手で扱うことの出来るもののみが占有され得るものと考えられておったのだ。そして人の労働の生産物という形式のもとに人の手から出て来るものは、当然、この場合にあてはまったのである。 ※訳は『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963)によりました。
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〇語句補足
・mancipation [女性名詞]
(→-man(i)-, -cip-) 【ローマ法】 握取行為,銅衡式売買:儀式的行為を通じての所有権譲渡. 『ロベール仏和大辞典』
↓で見るように、物の所有権移転の際に、持ち主が手に取って自分の所有であることを示すという儀式的行為が問題になっています。
百科事典を見てみましょう。
握取行為
あくしゅこうい
mancipatio
古代ローマにおける手中物 res mancipi──たとえばイタリアの土地,奴隷,軛および鞍で馴育しうべき動物,農業用地の地役権など──の所有権移転の物権的要式行為。所有権を移転しようとする当事者双方が,目的物たる手中物を持ってローマ市民である1人の計量係 libripensと,これと同一の資格を有する5人の証人のもとにおもむき,彼らの面前で目的物を握って,法定の式語を言明し,移転を受けようとする当事者は計量係の持っている秤を銅片でたたき (または押下げ) ,その銅片を代金の代りに相手方に手渡して,握取行為は完了する。これにより手中物の受領者は,市民法上の所有権を取得し,これに付随して供与者の受領者に対する追奪担保および瑕疵担保責任が発生した。前3世紀中頃には握取行為が仮装売買に代えられる現象が顕著になった。ユスチニアヌス帝法にはこの制度は存在しない。
出典 『ブリタニカ国際大百科事典 』
〇今日の要点
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Et tel est le cas tout naturellement des objets qui sortent des mains de l’homme sous forme produits de son travail.
そして人の労働の生産物という形式のもとに人の手から出て来るものは、当然、この場合にあてはまったのである。
短くすると
tel est le cas des objets qui sortent
des mains de l’homme
人の手から出て来るもの場合がそうである。
になります。
今日は以上です。
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