2025年3月13日木曜日

例文185

 

『仏文和訳法』を読む(例文185

 

山田原実 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262

を読んでいます。

 

第五章 否定語句

1. PAS, POINTの省略

次の如き場合にもpas またはpointが省略される。

(ロ)Siの後の否定文ではpas, pointを省略されることがある

今回も↑の続きです。

 

[例文185

L’effort personnel est inséparable de l’intérêt personnel. S’aider soi-même, il ne faut pas mépriser cet égoïsme-là! Un ironiste allemand, Henri Heine, écrit dans un passage charmant, en parlant de ses amis :Ils me comblèrent d’attentions et me dirent qu’ils allaient me protéger, mais avec toute leur protection je serais mort de faim si un brave homme ne s’était mêlé de mon affaire. Ah! le brave homme! il me donna à manger, ce dont je lui saurai toujours gré ; quel dommage que je ne pusse l’embrasser! Mais je ne pouvais, parce que ce brave homme—c’était moi.

[語句]

inséparable 分かたれない、離して考えることができない

un passage 通過、推移、章句

combler qqn. de qqc. ある人に厭というほどある物を押し付ける(encombrer「塞ぐ、混雑させる」と混同すべからず)

se mêler de ~に干渉する、~に容喙する。(se méler à~「~に加わる」と混同すべからず)

savoir gré de ~を満足する、~を感謝する

Quel dommage que 残念なことには~

 

[訳]

人の努力と人の利益とは離して考えることはできない。自らを助けるという、あの利己心を軽蔑してはならない。ハインリッヒ・ハイネというドイツの皮肉屋が、ある面白い章句の中で、その友達について、「彼らは厭というほど注意をおしつけ、私に保護してやろうと言う。しかし、どんなに彼らの保護があっても、もしある親切な人が私のことに干渉してくれなかったと仮定すれば、私は飢えて死んでしまっているだろう。ああ、その親切な人は私に食べるものをくれる。私はいつもそのことで有り難いことだと思っているが、残念なことに私は彼を抱擁することができない。だって、その親切な人は私だから。」と書いている。

 

◯語句補足

Ah! le brave homme! il me donna à manger, ce dont je lui saurai toujours gré ; quel dommage que je ne pusse l’embrasser! Mais je ne pouvais, parce que ce brave homme—c’était moi

の部分で、pusseは接続法半過去です。

この部分を『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963)は、「実に親切な男だ、彼は私に食物をくれたのである。それについて私は彼に終生感謝するだろう。彼を抱きしめることができなかったのは何とも残念なことだ。しかし私にはそれができなかったのだ、というのは、この親切な男というのが、私だったのだから」と訳しています。

 なお、ハイネの名前も『新しい仏文解釈法』に従いました。

 

 

今日の要点

si un brave homme ne s’était mêlé de mon affaire.

pasが省略されている、というのが今日の要点です。

 

今日は以上です。

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例文305

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