2025年3月21日金曜日

例文188

 

『仏文和訳法』を読む(例文188

 

山田原実 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262

を読んでいます。

 

今回から「3. 完全否定と部分否定」です。

第五章 否定語句

3. 完全否定と部分否定

 例えば、Aucun riche n’est heureux.という文と、Tous les riches ne sont pas heureux.という文を対照してその打消の意味を考えてみると、前者は完全否定で、「その金持も幸福でない」と世の中には幸福なる金持が存在せぬ意を表しているのに反して、後者は部分否定で,「金持は皆幸福だというわけではない」と世の中には幸福な金持もあるが不幸な金持もあるという意を表している。かくの如く、tous, tout à fait, toujours, complètement, entièrement, absolument, nécessairement などの如き絶対的な意味の言葉が否定に置かれた時は部分否定の意味をもつ。

 

[例文188

Comme les hommes n’ont pas tous le même degré de conscience, comme tous aussi ne font pas de leur revenu le même usage et n’ont pas avec des ressources égales le même train de vie, les uns étant prodigues, les autres économes, l’impôt général sur le revenu ne peut jamais atteindre exactement dans les mêmes proportions les différents contribuables.

[語句]

faire usage de~ ~を使う

le revenu 所得、収入

le train de vie 生活状態

prodigue 浪費する

le contribuables 納税者

 

[訳]

人間は皆が同じ程度の良心をもってはいないし皆がその収入を同じようには使わないし、また、等しい資源をもっておっても、ある者は浪費するし他の者は節約するから、皆が同じような生活状態ではおらないから、収入に賦課する一般的な租税は確実に同じ割合で納税者に及ぼされることはできない。

『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963)では、以下のように訳されています。

 人間は皆が同じ程度の良心を持ってはいないし、皆がその収入を同じようには使わないし、また、等しい収入源を持っていても、ある者は浪費家であるし他の者は倹約家であるしするから、皆が同じような生活状態ではない。従って一般的な所得税は個々のもう税者に対して、決して正確に同じ割合で影響を与えることはできないのである。

 

◯今日の要点

今日の要点はtousの部分否定です。辞書の例文を確認しておきましょう。

部分否定 Tous les étudiants n'ont pas répondu à cette question.学生が皆その質問に答えたわけではない

『プログレッシブ仏和辞典』

Tous ses amis ne sont pas venus. ()の友達がみんな来たわけではない(◆部分否定)

『プチロワイヤル仏和辞典』

➁ tout, tous と否定一般に ne ... pas とともに用いる場合は部分否定となるただしたとえば Tous les enfants ne sont pas malades は「子供たちすべてが病気なのではない」部分否定とも「子供たちはみな病気ではない」全否定とも解されるので前者の場合は Les enfants ne sont pas tous malades, 後者の場合は Aucun enfant n'est malade とするのが普通ne ... plus [jamais, guère] とともに用いる場合は一般に全否定となるTous ces tableaux n'existent plus. それらの絵はみなもはや存在しない).

『ロベール仏和大辞典』

今日は以上です。

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