『仏文和訳法』を読む(例文152)
山田原実 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262
を読んでいます。
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[注意] この項においては最上級の対照についてのみ説明したけれども、最上級に限らず一般にcelui de ~ +形容語句、またはAがBの一部分である場合のA de B + 形容語句は、その形容語句の修飾するものは~またはBではなく、celuiまたはAであることを忘れてはならない。
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[例文152] Un fameux négociant de Babylone laissait un présent de trente mille pièces d’or à celui de ses deux fils qui serait jugé l’aimer davantage.
[訳] バビロンのある名高い商人が、二人の息子の中で、自分をより愛していると判断される息子への贈物にと三万の金貨を残して置いた。
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◯今日の要点
[例文152]のcelui de ses deux fils qui serait jugéの部分で、
形容詞節のqui serait jugéが、直前のses deux filsではなく、
celuiを修飾している、ということです。
◯蛇足:以下は蛇足ですので読まなくてもかまいません。
celui de ses deux fils qui serait jugé l’aimer davantageの部分で、
seraitは条件法現在形です。どうして半過去ではないのかという疑問が生まれます。
『フランス語ハンドブック』を見ると、未来形には緩和にニュアンスがあって、
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緩和のニュアンスから推測のニュアンスが導かれる。未来の予測に用いられるのは当然だが、現在・過去に関する推測にもこの時制を用いることがある。 f)—Françoise, mais pour qui donc a-t-on sonné la cloche des morts? Ah! mon Dieu, ce sera pour Madame Rousseau. --Proust 「フランソワーズや、でもいったい誰のためにお弔いの鐘が鳴ったんだろうね。ああ、そうだったわ! あれはきっとルソー婦人のためだったに違いない」 |
と説明があります。
[例文152]は、現在形で書くと、
Un fameux négociant de Babylone laisse un présent de trente mille pièces d’or à celui de ses deux fils qui sera jugé l’aimer davantage.
バビロンのある名高い商人が、二人の息子の中で、自分をより愛していると判断される息子への贈物にと三万の金貨を残して置いている。
となります。sera jugéのseraは推測のニュアンスの未来形ですが、文全体が過去に置かれると、seraも時制の一致が働いて条件法現在に置かれる、というように解釈することができます。
今日は以上です。
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