『仏文和訳法』を読む(例文156)
山田原実 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262
を読んでいます。
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第四章 比較語句 1. 比較語句と比較の対象 [附]最上級の対照 最上級の対照、すなわち「⋯⋯の中で一番~」の「⋯⋯の中で」は、一般に前置詞deを選考させて、de⋯⋯の形で表し、最上級を示す語の後に置かれるものである。しかしながら次 ぎの如き場合には、対照が最上級を表す語の前に置かれているから注意を要する。 (ニ) 意義上対照が関係代名詞文で表される場合 すなわち前述の如き場合をのぞいて、最上級に関係代名詞文が続く場合、意義上この関係代名詞文を最上級の対照の如く訳さねばならない。 |
今回も↑の続きです。
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[例文156] « Toute peine, dit un des proverbes les moins contestables qui existent, mérite salaire ». Toute peine ; encore faut-il s’entendre! Toute peine utile ; toute peine aboutissant à un résultat profitable à celui pour qui elle est prise, et motivant, de sa part, le prix auquel il la paye ou le service qu’il rend en échange.
[語句 contestable論争の余地がある aboutir à~~に到達する motiver~~の理由になる。
[訳] 「すべての労苦は賃金をもらう値がある」と存在している諺の中で一番正確な諺の一つがいっております。すべての労苦です。なおその上よく理解し合わなければなりませんが、すべての有益な労苦です。その人の為にその労苦が取られた人にとってある有益な結果に到達し、また、労苦の側からいうと、その人が労苦の代として払った代価、または、その人が交換的になした勤労というようなものの理由となるすべての労苦です。 |
[語句補足]
『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963)の[語句]には次のように書かれています。重複している部分を省くと、
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s’entendre理解される。 aboutissantとmotivantの主語はともにtoute peineである。 prendre la peine労苦をする。 de sa partそれ(労苦)の側からいえば。(aboutir à un résultatと motiver le prix ou le serviceが文体的に一種の対をなしているのでこの句が使われたのだろう)。 payer qc. au prix de~代価~である物にたいしての支払いをする。
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主語を示すと
toute peine aboutissant à un résultat profitable à celui pour qui elle(労苦) est prise, et motivant(主語はtoute peine), de sa part (労苦の側), le prix auquel il(celuiその人) la(労苦) paye ou le service qu’il(その人) rend en échange.
となります。
◯今日の要点
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(ニ) 意義上対照が関係代名詞文で表される場合 すなわち前述の如き場合をのぞいて、最上級に関係代名詞文が続く場合、意義上この関係代名詞文を最上級の対照の如く訳さねばならない。 |
を、『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963)では
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最上級のあとにすぐ関係節がつく場合である。 この場合は意味の上から、この関係詞を最上級の対象(sic「対照」?)のように訳した法が良いことがある。 |
と解りやすく書いています。
[例文156]un des proverbes les moins contestables qui existent
では、「~の中で」にあたる語句はありませんが、意味の上から
存在している諺の中でと訳すべきだ、ということが今日の要点です。
今日は以上です。
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