『仏文和訳法』を読む(例文157)
山田原実 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262
を読んでいます。
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第四章 比較語句 1. 比較語句と比較の対象 [附]最上級の対照 最上級の対照、すなわち「⋯⋯の中で一番~」の「⋯⋯の中で」は、一般に前置詞deを選考させて、de⋯⋯の形で表し、最上級を示す語の後に置かれるものである。しかしながら次 ぎの如き場合には、対照が最上級を表す語の前に置かれているから注意を要する。 (ニ) 意義上対照が関係代名詞文で表される場合 すなわち前述の如き場合をのぞいて、最上級に関係代名詞文が続く場合、意義上この関係代名詞文を最上級の対照の如く訳さねばならない。 |
今回も↑の続きです。
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[例文157] La guerre mondiale a été, pour la coalition qui est restée victorieuse, une guerre de libération. Après la victoire des Alliés, chaque peuple aurait dû être libre selon son génie national. Comment se fait-il donc que, surtout dans certaines régions de l’Europe centrale, les conflits linguistiques se mêlent aux luttes politiques autant et peut-être même plus que dans la vieille Europe monarchique? La langue est le trésor spirituel le plus précieux qu’un peuple possède. [語句] la coalition 同盟、連盟。ここでは世界大戦の「英仏側連合国」の意。 la libération 解放。 l’allié 同盟国。ここでは「英仏側連合国」 le génie national 国民精神。 comment se fait-il que~~とはどうしたことか。 monarchique 君主政治の [訳] 世界戦争は、勝利を得た英仏側連合国にとっては解放の戦争であった。連合国の勝利の暁は各民族は自由にその民族の精神にしたがって生活することができるはずであった。それに、中部ヨーロパのある地方では特にそうであるが、言語上の葛藤が、昔の君主政治のヨーロッパにおいてと同じほど、いや、むしろそれ以上、政治的紛争の仲間入をしているのはどうしたことか。国語は一民族がもっている宝の中で一番高価な精神的宝物である。
※訳は『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963)を参考にしつつ、少し改変しました。 |
◯今日の要点
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最上級のあとにすぐ関係節がつく場合である。 この場合は意味の上から、この関係詞を最上級の対象(sic「対照」?)のように訳した法が良いことがある。 『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963) |
[例文157]La langue est le trésor spirituel le plus précieux qu’un peuple possède.
では、「~の中で」にあたる語句はありませんが、意味の上から
一民族がもっている宝の中でと訳すべきだ、ということが今日の要点です。
今日は以上です。
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