『仏文和訳法』を読む(例文299)
山田原実先生 著『仏文和訳法』,大学書林,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1704262
を読んでいます。
今回は前回、例文298の「註」からの演習問題です。
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[註] Sauf~「~を除けば」とsauf à~(不定法)「~しさえすればよいのだから」とを区別するを要す。 Sauf à~と同じ意味の言葉に quitte à~「しさえすればよい」がある。 |
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[例文299]
[語句] vivre au jour le jour その日暮らしをする au fur et à mesure que~ ~に応じて、~につれて、~に従って puiser A à B BからAを汲み出す affluer 流れ込む suspendre 一時中止する、停止する les services publics 公役
[訳] 国家は、収入を受けるに従ってそれを金庫に入れ、そして、資源の流入が止まればその公役を停止すればよいのだからという具合に、支出をせねばならないと思うだけを乱雑に金庫から取り出すというような、その日暮らしをなすことができない。一私人からいっても許されないかくのごとき行為は、その他、国家にとっても行われ得ざる行為であろう。
※『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963) では以下のように訳されています。
国家は収入を受け取り次第にそれを金庫に入れ、また支払いをしなければならぬと思うだけ乱雑に金庫から取り出すという風にその日暮らしをして、収入源がその流れを止めたら、その公務を停止して立ち止まりさえすればいいんだ、というような生き方をすることはできない。個人の場合にあっても許し難いそのような行為は、国家の場合には、更に、実行不可能なことであろう。 |
〇今日の要点
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quitte à+不定詞 「しさえすればよい」 ※『新しい仏文解釈法』(山田原実著、島田実増訂、大学書林,1963) では以下のような説明がされています。
Quitte à~ 「~しさえすればよい」、「~しても構わないから」=au risque de, en acceptant de subir le seule incovénient de~ |
辞書で確認しておきましょう。
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quitte à+不定詞 [副・句] たとえ…することになっても(構わないから),…するおそれがあるとしても(敢えて).注quitte は不変. Vérifions le moteur, quitte à perdre du temps.|時間のむだになっても構わないから,エンジンを点検しよう. 『プログレッシブ仏和辞典』 Quitte à (+ infinitif) : au risque de. (ロベール)
Quitte à, sauf à, au risque de subir telle chose, à faire telle chose : J'avouerai, quitte à payer pour cette erreur. (ラルース)
Absolument et familièrement, quitte pour, quitte à, à charge de. Quitte pour être grondé. Quitte à être grondé. J'irai toujours mon chemin, quitte à changer quand on changera. [Sévigné, 236] (リトレ)
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Quitte àは、ほとんどの例で「~してもかまわなないから」という意味で使われていますが、リトレの例文は「~すればよいのだから」という意味で使われているように思います。
J'irai toujours mon chemin, quitte à changer quand on changera
(試訳:私はこのまま我が道を行くよ、周りの人が変える時に変えればいいのだから。)
今日は以上です。